PRACTICE STEP 01
現状の業務フローを Claude にアウトプットさせる
本 STEP のゴールは、自分が日々こなしている業務の手順を 図 1 枚で他人に説明できるレベル まで可視化することです。Claude に質問させながら「業務の棚卸し → 言語化 → 図化」と段階を踏み、抜け漏れのない現状フロー図(Mermaid)を完成させます。
前提
本 STEP では業務情報を Claude に入力します。
必ず 第 6 章 セキュリティ・社内利用ルール を読んでから取り掛かってください。取引先名・社内システム名・個人名・契約金額はマスキング(仮名化)してから入力します。
1. どの図を使うか — 用途別チートシート
Mermaid 記法では用途に応じて何種類かの図が使えます。本 STEP では主に フローチャート と スイムレーン (subgraph を使ったレーン分け)を使います。
図の種類
向いている用途
Mermaid 記法
フローチャート
一連の手順・判断分岐の可視化(最も汎用)
flowchart TD
スイムレーン図
複数部署・複数役割をまたぐ業務の分担
flowchart LR + subgraph
シーケンス図
システム間/人間間の時系列のやり取り
sequenceDiagram
状態遷移図
申請・チケットなど「ステータスの変化」
stateDiagram-v2
ガントチャート
プロジェクト工程・期日のスケジュール
gantt
2. 全体の流れ(4 ステップ)
1 発で完璧な図は作れません。次の 4 ステップで Claude と対話しながら育てます。
STEP A:業務の棚卸し(自分用のメモ作り)
Claude に渡す前に、自分の業務の輪郭を頭の中で整理する。
STEP B:Claude に箇条書きで言語化させる
Claude にヒアリング役を担ってもらい、抜け漏れを質問で引き出させる。
STEP C:Mermaid フロー図化
整理した手順を Mermaid 記法で図にしてもらい、Artifact 上で描画させる。
STEP D:仕上げ
色分け・担当注記・凡例を追加して、他人に見せられる状態にする。
3. STEP A:業務の棚卸し
プロンプトを書く前に、最低限以下の項目を自分の頭の中で(または手元のメモで)整理しておきます。書ききれていない項目は STEP B で Claude が質問してくれるので、完璧でなくて大丈夫です。
業務名 — 例:受注対応、月次経費精算、新規顧客の与信審査
トリガー — 何が起きたら開始するか(顧客からの問い合わせ、月初の日付など)
登場人物・部署 — 関わる人と役割(自分・上長・他部署・顧客など)
使うシステム — メール・ワークフロー・基幹システムなど
成果物 — 最終的に何が出来上がれば完了か(請求書発行、契約締結など)
例外ケース — 普段あまり起きないが、起きると面倒なケース(差戻し・NG・キャンセル)
頻度・所要時間 — 月何件くらいか、1 件あたり何分くらいか
4. STEP B:Claude に箇条書きで言語化させる
自分の業務を題材にするときは、いきなり「フロー図を作って」と頼まず、まず Claude にヒアリング役 を担ってもらい、対話で抜け漏れを引き出させるのがコツです。
プロンプト例(テンプレート)
あなたは社内の業務分析者です。私が担当している業務を、改善検討のための前段としてヒアリングしてください。
次の情報を出発点として、不明点・あいまいな点があれば1ターンに最大5問まで質問してください。私が回答したら、新しい質問を返してください。これを2〜3ターン繰り返し、最後に「番号付きの大ステップ」と、各ステップごとに次の項目を表で整理してください。
- 担当
- インプット
- アウトプット
- 分岐条件
- 1件あたり所要時間(分)
- 月間頻度(件/月)
- 属人化メモ(特定の人しか判断できないか)
業務名:○○○
所属部署:○○部
頻度:月 ○ 件
登場人物:私(営業)/上長(部長)/顧客/開発部
使うシステム:メール/○○ワークフロー/社内基幹
ざっくりの流れ:
- 最初に起きること
- 次に行うこと
- 最終的なゴール
ルール:
- 異常系(NG・差戻し・キャンセルなど)も漏れなく聞き出してください
- 不明点は推測せず「未確認」と明記してください
- 固有名詞(取引先名・個人名)は伏せた状態のまま進めてください
- 工数・頻度・属人化メモは、後段の STEP 02(改善検討)で必要になります。聞き取れていない項目は「未確認」と明記し、推測値を入れないでください
TIP
最初のプロンプトで「2〜3 ターン回す」と宣言しておくと、Claude が 質問駆動 で会話を進めてくれます。1 ターンで完成させようとせず、Claude の質問に答えながら 2〜3 ターン回すと抜け漏れが激減します。
5. STEP C:Mermaid フロー図化(実例:受注業務フロー)
STEP B で整理した箇条書きを、そのまま Mermaid 記法のフローチャートに起こしてもらいます。Claude の Artifact 上で図が描画され、その場で見た目を確認できます。
プロンプト例
上記の整理を、Mermaid 記法の flowchart で図にしてください。
- 向き:上から下(TD)
- 判断分岐は ◇(菱形)で、Yes / No の経路を明示
- 異常系の終点は「中断」「保留」「失注」など別ノードで終わらせる
- ノード名は 12 文字以内、改行が必要なら <br/>
- 出力はコードブロックのみ(説明文は不要)
出力イメージ(Mermaid ソース)
flowchart TD
A[問い合わせ受領] --> B[要件ヒアリング]
B --> C[見積作成]
C --> D{顧客の<br/>稟議結果}
D -- 承認 --> E[受注確定]
D -- 却下 --> X1[失注:理由を記録]
D -- 追加要望 --> B
E --> F[キックオフ]
F --> G[開発・納品]
G --> H{検収}
H -- OK --> I[請求・完了]
H -- NG --> J[是正対応]
J --> H
実際の表示
flowchart TD
A[問い合わせ受領] --> B[要件ヒアリング]
B --> C[見積作成]
C --> D{顧客の<br/>稟議結果}
D -- 承認 --> E[受注確定]
D -- 却下 --> X1[失注:理由を記録]
D -- 追加要望 --> B
E --> F[キックオフ]
F --> G[開発・納品]
G --> H{検収}
H -- OK --> I[請求・完了]
H -- NG --> J[是正対応]
J --> H
6. 部署をまたぐ業務はスイムレーン図で(同じ受注業務を別視点で描く)
業務が複数の部署・役割をまたぐ場合は、フローチャートよりも レーン(横帯) に分けたスイムレーン図のほうが「誰が何をやるか」が一目でわかります。Mermaid では subgraph をレーン代わりに使います。
ここでは、上のセクション 5 で作った同じ受注業務フロー を、視点を変えてスイムレーンで描き直す例を示します。同じ業務を 2 通りの図で表現できると、提出先(手順を学ぶ新人 vs 部署間の調整役)に合わせて図を使い分けられるようになります。
プロンプト例
セクション 5 で作った受注業務フローを、スイムレーン形式で Mermaid の flowchart に書き直してください。読みやすさを優先して、次のルールを守ってください。
- 全体は flowchart TB(上から下にレーンを積む横帯スイムレーン)
- レーン:上から「顧客」「営業」「開発」 の 3 つ。subgraph で囲む
- 各 subgraph 内は direction LR を指定し、左から右へ時系列で並べる
- 各ノードの先頭に通し番号(①②③…)を入れ、矢印を追わなくても順番が読めるようにする
- 流れ:問い合わせ → ヒアリング → 見積 → 稟議結果 → 受注確定 → キックオフ → 開発・納品 → 検収 → 請求
- 異常系(追加要望での差し戻し/検収 NG)の戻り矢印も書く
- ノード名は 10 文字以内、担当の頭文字をプレフィックス(例:C1 / S1 / D1)
出力イメージ(Mermaid ソース)
flowchart TB
subgraph 顧客
direction LR
C1["①問い合わせ"]
C2{"④稟議結果"}
C3{"⑧検収"}
end
subgraph 営業
direction LR
S1["②要件ヒアリング"]
S2["③見積作成"]
S3["⑤受注確定"]
S4["⑩請求・完了"]
end
subgraph 開発
direction LR
D1["⑥キックオフ"]
D2["⑦開発・納品"]
end
C1 --> S1
S1 --> S2
S2 --> C2
C2 -->|承認| S3
C2 -->|追加要望| S1
S3 --> D1
D1 --> D2
D2 --> C3
C3 -->|OK| S4
C3 -->|NG| D2
実際の表示
flowchart TB
subgraph 顧客
direction LR
C1["①問い合わせ"]
C2{"④稟議結果"}
C3{"⑧検収"}
end
subgraph 営業
direction LR
S1["②要件ヒアリング"]
S2["③見積作成"]
S3["⑤受注確定"]
S4["⑩請求・完了"]
end
subgraph 開発
direction LR
D1["⑥キックオフ"]
D2["⑦開発・納品"]
end
C1 --> S1
S1 --> S2
S2 --> C2
C2 -->|承認| S3
C2 -->|追加要望| S1
S3 --> D1
D1 --> D2
D2 --> C3
C3 -->|OK| S4
C3 -->|NG| D2
読みやすくする 3 つのコツ
ノード名に通し番号を入れる (①②③…)。レーンをまたいで行き来する業務でも、番号さえ追えば時系列が崩れない。
subgraph に direction を明示する 。横帯スイムレーンなら flowchart TB +各 subgraph に direction LR。これでレーン内の順序が固定される。
レーン順は「メインの担当」を中央に、外部(顧客)を上か下に置く と、レーン間を行き来する矢印の交差が減る。
注意
Mermaid のスイムレーンは厳密な BPMN ではなく、複雑な分岐が増えると見づらくなります。レーン数は 3〜5 本、1 レーンあたりノード数は 5 個以内 を目安にしてください。それを超える場合は 「正常系だけの図」と「異常系を含む図」に分ける よう Claude にお願いします。
7. STEP D:仕上げ
一度図にできたら、見せる相手(次の STEP 02 で Claude にレビューさせる/最後に AI 活用推進担当者へ渡す)に合わせて整えます。
プロンプト例
上の図に次の修正を加えてください。
- 異常系ノード(失注/NG/是正対応)を赤系で塗る
- メインパス(A→B→C→D→E→F→G→H→I)の矢印を太線に
- 各ノードに担当部署を [ノード名<br/>(営業)] の形で追記
- 凡例(メイン/異常/判断)を右下に subgraph で追加
TIP
色付けは classDef と class でまとめて指定すると、後から色変更しやすい構造になります。「classDef でスタイル定義してから class で割り当てて 」と Claude に頼むと整った構造で返してくれます。
8. 抜け漏れ防止のセルフチェック
Claude が出した図をそのまま STEP 02 に渡さず、必ず自分で次のチェックを行ってください。よく見落とすポイントを列挙します。
異常系・例外系の経路 が抜けていないか(NG・差戻し・タイムアウト・キャンセル)
判断分岐 の条件文が、現場の判断基準と一致しているか
担当部署・役割名 が現在の組織と合っているか(旧名称が残りやすい)
始点と終点 が明確か(「○○の依頼から始まり、△△で完了」が読み取れる)
ステップの粒度 が揃っているか(同じ図の中で粗い/細かいが混在しない)
属人化ポイント (「○○さんしか分からない判断」がある箇所)が明示されているか
システム名・固有名詞 に社外秘が含まれていないか
TIP
セルフチェックも Claude に手伝わせると効率的です。「この図を新人視点で読んで、わかりにくい箇所と質問しそうな点を 5 つ挙げて 」と頼むと、説明の補足が必要な箇所を洗い出せます。
9. 機密情報の最終確認
必ず確認
本 STEP の成果物(Mermaid ソース・図・会話履歴)に、
取引先名・社員名・社内システム名・契約金額・個人を特定できる情報 が残っていないか確認してください。残っている場合は仮名化してから次セクションの引き継ぎパッケージ作成に進みます。詳細ルールは
第 6 章 。
10. 次セッションへの引き継ぎパッケージ作成
本ガイドは STEP 02 を別の Claude セッションで進める 前提です。STEP 01 で集めた業務情報・Mermaid・ステップ別詳細を、STEP 02 の新しいセッションに 1 回コピー&ペーストするだけ で渡せるように、Claude に 「引き継ぎパッケージ」 を Artifact 形式で出力させます。Artifact なら右上の「コピー」ボタン 1 つで全文取得できます。
プロンプト例
ここまでのヒアリング結果・Mermaid 図・ステップ詳細を、STEP 02 で別セッションに引き継ぐための「引き継ぎパッケージ」として Markdown の Artifact 1 枚にまとめてください。構成は以下を厳守してください。
# 業務改善ガイド|STEP 02 引き継ぎパッケージ
## 0. このパッケージの前提(受け手の Claude へ)
### 全体目的
社内の特定業務について、Claude との協働で「現状フロー → 改善案 → 上申用成果物」を作成する 3 STEP のガイドです。最終ゴールは AI 活用推進担当者に提出する改善提案資料の作成。
### 現在地
**STEP 02 / 全 3 STEP**(STEP 01 は完了、STEP 03 は次セッション)
### STEP 別の責務
| STEP | 状態 | やること | 成果物 | やらないこと |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 完了 | 現状業務フローの可視化 | 現状 Mermaid + ステップ詳細表 | 改善案の提案 |
| 02 | 進行中 | 改善案の発散→収束→Before/After 図化 | Before/After 図 + 採用 3 案 + 現場制約 | 最終成果物の体裁整え |
| 03 | 次回 | 上申用成果物の作成 | 提案資料 / 文書 | 新規改善案の追加 |
### STEP 02 受け手 Claude への指示
- 本パッケージの「3. ステップ別詳細」を一次情報として扱うこと(Mermaid 図は要約に過ぎない)
- 業務情報を追加で聞き出さないこと(STEP 01 で済んでいる)
- 最終成果物の体裁を整え始めないこと(STEP 03 の責務)
- 不明点は推測せず「STEP 01 で未収集」と明記すること
## 1. 業務概要
- 業務名 / 所属 / 月間頻度 / トリガー / 主な登場人物 / 使うシステム
## 2. 現状フロー図(Mermaid)
(flowchart のコードブロックをそのまま貼付)
## 3. ステップ別詳細
| # | ステップ | 担当 | インプット | アウトプット | 分岐条件 | 1件工数(分) | 月間頻度 | 属人化メモ |
## 4. セルフチェック結果
- 異常系の網羅 / 分岐条件の妥当性 / 担当の現在性 / 属人化箇所数 / 機密マスキング状況
## 5. STEP 02 で重点的に見たい論点(任意)
- 私が特に気になっている箇所(このセクションは私が後で追記するので空欄でも構いません)
# ルール
- 上記の見出し階層・セクション番号は厳守
- 推測値で穴埋めしない(未収集は「未収集」と明記)
- Mermaid は ```mermaid フェンスで囲む
- 出力は Artifact 1 枚(type: text/markdown)
TIP
Artifact に出力させると、サイドパネル右上の「コピー」アイコンから全文を 1 クリックでクリップボードに取得できます。あとは STEP 02 の新しい Claude セッションの最初のメッセージにペーストするだけで、Mermaid 図・ステップ詳細・工数・属人化情報・本ガイドの責務情報がまとめて受け継がれます。
注意
引き継ぎパッケージは Teams 投稿・メール添付などで Claude セッションの外に出る可能性 があります。コピー前に「9. 機密情報の最終確認」を必ず通してから、Artifact を出力させてください。
この STEP のまとめ
図化の前に「業務の棚卸し」と「Claude による質問駆動ヒアリング」で抜け漏れを潰す。
シンプルな業務は flowchart TD 、部署をまたぐ業務は subgraph によるスイムレーン 。
1 発で完成させようとせず、対話で 2〜3 回育てる。
図ができたら、自分で異常系・担当名・粒度・固有名詞をチェックする。
最後に 「引き継ぎパッケージ」Artifact を出力させ、STEP 02 の新しいセッションに 1 回貼り付ければ移行完了。
← STEP 00 事前準備
業務改善ガイド目次
STEP 02 改善フローを Claude と検討する →